2021年4月に発売されたM型スマートフラット。業界を驚かせた金属特有の質感を活かしたフラットサイディングは誕生までに約4年の歳月を要しました。そこには材料や製品企画の見直し、生産ラインの大改造など、開発部員の不断の努力がありました。
金属サイディングのフラット製品についてはチューオー社内で幾度となくトライアルを重ねてきましたが、それまで商品化には至っていませんでした。フラットな意匠の実現にはいくつものハードルがあったからです。なかでも最大の課題は「ベコ」と呼ばれる歪みや凹みの発生を防ぐこと。金属はその特性上、どうしても歪みや凹みが目立ちやすいものです。ベコ対策の一つとして、ごく細かなエンボス加工を施すことで、限りなくフラットに近い表面意匠を開発していましたが、完全なフラット意匠は技術的に解決を図れずなかなか実現できませんでした。再度開発に踏み切ろうとした背景には、鋼板スペックやヌレートの発泡品質の向上、市場要求の高まりなど複合的な要因がありました。
開発にあたっては、まず成形段階でのベコの発生を抑えることが課題でした。ベコの原因のひとつが、芯材となるヌレートの発泡です。
近年ノンフロン処方ヌレートの試作が他製品で頻繁に実施されていたこともあり、前回トライアル時より、ベコを抑えるための生産条件について知見が蓄積されていたことは幸いでした。また、今回は表面意匠のバリエーション化ではなく、製品規格から見直したため、防耐火認定を新規に取得。
本製品は芯材にノンフロンのハイドロフルオロオレフィン(HFO)を用いたイソシアヌレートフォームを採用することで、耐火性の向上に加え、環境に配慮した製品を目指しました。
フラットの意匠ながら三次元の重厚な立体感を演出するための製品仕様が採用されました。しかし、仕様を変更すれば当然、設備の変更も余儀なくされます。限られた生産ラインで巾の異なる既存製品と新製品の生産両立のためにはどうしたら良いのか。設備メーカーと協働しながら両製品を生産できる条件を探っていきました。
新しいものを生み出す際には、今までのやり方を疑い、リセットを断行しなくてはなりません。製品規格や製法などを抜本的に見直すことは容易ではありませんでしたが、開発部一丸となり難題へのチャレンジを続けました。
2021年4月、満を持してM型スマートフラットが発売されました。もともと建築家や設計士の皆様から金属らしい質感を活かしたフラット製品が望まれていた背景もあり、M型スマートフラットは瞬く間に市場に受け入れられました。
また、業界最厚の18ミリの厚みと嵌合部の深さにより変形リスクを抑え、輸送性や施工性も高いレベルも担保。結果として「ベコ」のないミニマルで美しい外観の建築を実現し、建築デザインの多様性を広げることに寄与できたのではないかと自負しております。
そして、販売元のニチハが2021年度のグッドデザイン賞の受賞に至りました。フラット製品の構想から約4年。数々の苦労がありましたが、チューオー一同、この一大プロジェクトに関わることが出来たことを誇りに思っております。